終の棲家としてのマンション
井上 恵子氏 「終の棲家のマンション選び」より抜粋
資料は国土交通省が実施した平成20年マンション総合調査から
■ マンションを終の棲家に選ぶ人が増加
上図は国土交通省が平成20年に行った「マンション総合調査」のうち、平成11年から平成20年の間に起こった変化をまとめたものです。
これによると、マンションに住む人の「永住意識」年々増えており、平成11年では39.6%だった
のに対し、平成20年には49.9(約半数)の人がマンションを「終の棲家」として考えるように
なっていることが分ります。
マンションの世帯主の年齢は平成11年度から20年度の間に50才代以上の割合が
約51%から63.5%へと増加しており、居住者の高年齢化もうかがえます。
また、平成11年から平成15年のの世帯人数の変化をみると「1人」及び「2人」の割合が約23%から約43%へと
大きく増加しているのに対し、「3人以上」のファミリー世帯は約77%から約57%へ減少しています。
このことから、マンション居住者の高齢化、小世帯化が進み、
それととともに「終の棲家」としてマンションを選んでいる方が増えていることがわかります。
■ 維持が簡単、独立しているが近所との助け合いも
戸建住宅では、庭樹の手入れや外壁・屋根の補修といったメンテナンスが意外と大変で、費用もかかります。
また、夏場の草むしり、秋の落ち葉掃きなど、マンション住まいにはない重労働的な作業もたくさんあります。
高齢になるほどそういった維持管理面の負担感が大きくなると言えるでしょう。
子育て時代には部屋数も面積も広いほどありがたかった家も、
夫婦2人もしくは1人住まいになると広すぎて掃除が大変、
光熱費が余計にかかる、防犯上も不安である、などといった声が聞かれるようになります。
マンションならほど良い広さの部屋で戸建住宅よりは冬場暖かく、
カギ1つで戸締まりもOKなどと、高齢者にとって望ましい条件が揃うのです。
さらに、大勢の世帯が集まって住むという形態に安心感もあるようです。
同じマンションの住人と親しくなれば、なにかあった時にすぐ助けを求めることもできます。
働き盛りで時間がないときはうっとおしいと感じる方もいらっしゃるでしょうが、
高齢になれば逆に心強い利点となるでしょう。
■ 持家を手放してマンションに住み替え
このようにマンションには高齢になってから住むのに適した条件が揃っています。
子育て期は戸建住宅に住み、子どもが巣立ってからは近くのマンションに入居した
ご夫婦もいらっしゃいます。家には広さよりも、買い物や病院に行きやすいといった
利便性やバリアフリーであることなどの安全性がより必要になってきます。
■ 老後を快適に暮らすための条件
☐立地の利便性
駅に近く、道のアップダウンが少なく、日常的な買い物に便 利もしくはバス、タクシーが使いやすい場所にあることなど が必要です。
☐マンションの共用施設
フロントサービスが充実しているマンションであれば安心でしょうし、
また、健康に配慮したスポーツジムや、ビリヤード、囲碁将棋
などといった同じ趣味を持った同世代が集まる場があると楽しく過ごすことができます。
☐共用部のバリアフリー
将来訪れるかもしれない車いすの使用を考えて、
道路からエントランスホールまでスロープでつながっていること、
外廊下・エントランスホール・エレベーターホールが広めで、かつ手すりがあること。
さらに万が一の時を想定してストレッチャーが入るような
縦長のエレベーターが最低一基はついているとなお安心ですね。
☐住戸内部のバリアフリー
住戸の内部でも、車いす使用を考えて基本的に段差がないこと、
廊下、主な出入り口に車いすが通れる幅があるなど、
全体的にゆったりとした造りであるかチェックします。
最低でも寝室は6帖以上の広さがあると良いでしょう。
トイレや浴室に手すりがあること、玄関には腰を掛けられるベンチを置くスペースや
手すりがあるとより便利になります。
☐断熱性の高いマンションであること
コンクリート造は木造よりも気密性が高く、
マンションでは上下左右の住戸が断熱材の役割も果たすからです。
特に高齢になると室温の温度差により冬場のトイレやお風呂でのヒートショックを起こしやすくなるので、
断熱性に配慮したマンションを選びたいものです。
断熱性が高ければ部屋ごとの温度差が少なく体に優しく、
光熱費も安くすみ、夏も冬も快適に過ごせます。